ラ・クァルティーナ
NHK交響楽団のチェリスト(藤森亮一・ 藤村俊介・銅銀久弥・桑田歩氏)による四重奏団ラ・クァルティーナのコンサートに出かけた。毎年恒例の北九州国際音楽祭の一環として響ホールで開かれたもの。N響は海外公演が終わったばかりで、前日の深夜に北九州空港に着いたそうだ。昼間には小学生向けのプログラムもあったみたいで、かなり過酷な日程だ。
体力・技術・頭脳・オーラ・人間性・エレガンス。アスリートがトップまでたどり着くための「六つの鍵」としてフローラン・ダバディー氏が挙げている。それぞれ前のものが後の必要条件。エレガンスを以て頂点とするところが何よりも美を重んじるヨーロッパ的というかフランス人らしいところであるが、彼らの云うところの美とは決して表層的なものではないことがうかがわれる。もちろん体力が全ての基礎に置かれているが、それを含めてこの6つは音楽家にも通じるところのものだろう。
話を戻して、ラ・クァルティーナの面々もさすがに日本のトップ奏者の集まりというべきで、全く疲れを感じさせない演奏ぶり。
アルビノーニの「アダージョ」、クレンゲル「主題と変奏」、バッハの「G船上のアリア」「シャコンヌ」、ポッパー「演奏会用ポロネーズ」。休憩を挟んで大作曲家たちのメモリアルイヤー(川島素晴氏編曲)ということで、モーツァルト(生誕250年)・メドレー、ブルグミュラー(生誕200年)の25のやさしい練習曲より「アラベスク」「牧歌」「バラード」「貴婦人の乗馬」、シューマン(没後150年)の子どもの情景より「トロイメライ」。最後に、武満徹(没後10年)のうたIIより「死んだ男の残したものは」で結ばれた。アンコールに、フラマリオ&ソリチッロの「黒猫のタンゴ」、ガルデル「首の差で」、モーツァルト「トルコ行進曲」と3曲も弾いてくれた。
なじみの曲も多いけれど、巧みな編曲にチェロの技術を駆使した演奏で、均整のとれたアンサンブルには恐れ入るばかり。事もなげにやってのけるのがまたニクイ。僕たちもチェロ四重奏にトライしようとしているのでよく分かるが、ちょっとしたハーモニーをつくるのでさえ結構苦労するというのに......
武満徹の「死んだ男の残したものは」は没後10年(もうそんなに!)にふさわしくも思われ、とても印象に残った。石川セリさんが歌っているものもいいが、チェロの音色も曲に合っていて訴えてくるものがある。
最後には本音楽会恒例のサイン会があったので、1枚買って並んだ。この時には皆さんさすがにお疲れのご様子だったけれど、快く応じてくださった。ただでさえ忙しいオケの合間を縫っての活動で、どうしてもタイト・スケジュールとなるので大変そう。それにチェロって四重奏はもちろん、オケでも弾きっぱなしだから、やはりタフでないと務まらないでしょうね。
最近、だんだん弱ってきているので、帰りに駅近くのイタリア料理屋「アクア・ヴィータ」でたらふく食べた。身も心も満たされた1日。
☆写真は10月24日にリリースされたばかりの「リベルタンゴ〜4本のチェロのための作品集6」のジャケット。
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コメント
チェロ四重奏で面白そうなレパートリーがあったら、教えてください。
例のチーム名ですが、「ラ・軽ティーナ」というのを思いつきました(爆)。
投稿: みっち | 2006年10月30日 (月) 19時04分
聴いていて思ったのは、チェロにできないことはないということです。技術さえあれば。
またいろいろ挑戦しましょう!
では「ラ・軽ティーナ」でいきますか? 勘違いして聴きに来る人も見込めますしね^^
投稿: osamu | 2006年10月31日 (火) 08時27分